製造業のFAX受注、手入力をやめたいのにやめられない理由 — 調査データと受注側からできる一歩
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毎朝、FAXで届いた注文書の型番を、生産管理システムや販売管理ソフトに1件ずつ打ち込む。急な追加や仕様変更の電話が入るたびに手が止まり、締め時間の前になると机の上に注文書が積み上がっていく——。製造業の受注事務では、いまだにこの光景が当たり前のように残っています。
「FAXでの受注、いいかげんやめたい」と思っている方は多いはずです。この記事は、そう感じている製造業の受注事務担当者や経営者に向けて、なぜ「やめたいのにやめられない」のかを公開されている調査データで確かめたうえで、取引先を巻き込まずに受注側だけで踏み出せる現実的な一歩を整理したものです。結論から言うと、FAXそのものをなくすのは当面むずかしくても、「届いた後の手入力」は受注側だけで減らせます。
「やめたいのにやめられない」のはあなたの会社だけではない
まず、この負担が自社特有の問題なのか、業界全体の話なのかをはっきりさせておきます。AI inside株式会社が2024年に公表した調査(製造業の受注業務担当者329名を対象にした公開情報)には、現場の実感を裏づける数字が並んでいます。
- 紙の書類をやり取りしている受注担当者のうち、**73.3%**が「FAXでの書類の受領がある」と回答
- FAXで受け取った書類を、**60.4%**がシステムへ手入力していると回答
- FAX書類を受け取っている担当者の**88.4%**が「FAXでのやり取りをやめたい」と回答
- 手入力をしている担当者の**約88%**が、データ入力を自動化するツールの導入を希望
つまり、7割以上がいまだにFAXで受け取り、その大半を手で打ち込み、そして9割近くが「やめたい」と思っている、という状況です。「うちだけが古いのだろうか」と感じていたなら、そうではありません。製造業の受注現場では、FAX手入力への不満はむしろ多数派だと言えます。
それでもFAXが消えない構造的な理由
これだけ多くの人が「やめたい」と思っているのに、なぜ製造業のFAX受注はなくならないのでしょうか。同じ調査で、やめたいと答えた人にその理由を聞いた結果が示されています。最も多かったのは「取引先がFAXを利用しているため、他のツールに移行できない」で、**63.0%**にのぼりました。
ここが肝心な点です。FAXをやめられない主な原因は、自社のやる気やITへの苦手意識ではなく、発注する側(取引先)の都合にあります。受注側がどれだけWeb発注やEDIを整えても、取引先が「今までどおりFAXで送る」と決めている限り、FAXは届き続けます。製造業では、長年の取引関係や相手先の社内ルール、図面や仕様書を紙で回す商習慣が絡むため、この壁はとくに厚くなりがちです。
だからこそ、発想を切り替える必要があります。「FAXの受信をなくす」ことに労力を注ぐのではなく、「FAXは届く前提で、届いた後の手入力をなくす」ほうが、受注側だけの判断で進められて現実的です。
製造業の受注入力に特有のつまずき
手入力の負担は、どの業種でも共通していますが、製造業には読み取りを難しくする固有の事情があります。効率化を考える前に、自社のどこがボトルネックかを見極めておくと、対策の順番を間違えにくくなります。
- 型番・品番の読み違い: アルファベットと数字が混在する型番は、「0」と「O」、「1」と「I」、「5」と「S」など形の似た文字を取り違えやすく、手書きやかすれたFAXではさらに危うくなります。1文字違うだけで別部品を出荷してしまうため、影響が大きい項目です
- 多品種・小ロットの注文: 1枚の注文書に多数の品目が並び、それぞれ数量が少ない、という注文が多いと、行数が増えるほど転記の視線移動が増え、行ずれ(1行下の数量を入れてしまう等)が起きやすくなります
- 図面番号・支給品番号などの付帯情報: 品番だけでなく、図面番号や取引先ごとの管理番号を一緒に転記する必要がある場合、入力する項目が増えるほど負担も間違いも増えます
- 単位・入り数の思い込み: 「この取引先はいつも10個入りの箱単位」といった記憶で入力してしまい、実際は個数指定だった、というすれ違いも起こりがちです
型番の読み違い対策そのものについては、建材・機械部品商社特有の「品番の読み違い」対策でも具体的に掘り下げているので、部品を扱う会社は合わせて読んでみてください。
取引先を変えずに受注側だけでできる一歩
取引先にFAX廃止をお願いするのは、前述のとおり行き詰まりやすい方法です。ここでは、相手に一切変更を求めずに受注側だけで始められる進め方を、負担の軽い順に並べます。
まず現状を「枚数」と「時間」で測る
いきなりツールを検討する前に、1週間でよいので、受注入力にかかった時間と処理した枚数を記録します。「なんとなく大変」を「1枚あたり何分・月に何枚」という数字にすると、後で対策の効果を比べられますし、経営者への説明材料にもなります。時給換算での可視化の手順は受注入力のコストを「時給換算」で可視化する方法にまとめています。
品目マスタと「読み方メモ」を整える
型番や品名の表記ゆれ(全角と半角、ハイフンの有無など)を吸収できるよう、品目マスタを整えておきます。あわせて、「この取引先のこの書き癖はこう読む」というベテランの頭の中の知識を一覧表にしておくと、担当者が休んでも処理が止まりにくくなります。これは費用をかけずに始められ、後述の自動化を入れる際にも効いてきます。
手入力そのものを「確認」に置き換える
ここまでの土台ができたら、読み取りを機械に任せて、人は「全部を打ち込む」から「怪しいところを確認する」へ役割を変えることを検討します。ポイントは、どの方式でも人の確認はなくならないことです。AIでも人でも読み取りは間違えます。差が出るのは「間違いをどれだけ速く見つけて直せるか」なので、製品を選ぶときは次を確かめてください。
- 読み取り結果のうち「自信のない箇所」を機械が教えてくれるか(全件を目視で見直すなら手入力と手間が大きく変わりません)
- 型番を品目マスタと突き合わせ、一致しないものを警告してくれるか(「読めた」と「基幹システムに正しく入る」は別問題です)
- 生産管理・販売管理システムに合わせた列順・文字コード(Shift_JISが多い)でCSVを出せるか
取引先を変えずに受注側だけで負担を減らす考え方の全体像は、FAX受注はなくせない。でも「手入力」はなくせるでも整理しています。
まとめ
製造業の受注業務では、7割以上がいまだにFAXで書類を受け取り、その多くを手入力し、9割近くが「やめたい」と感じている——これは公開調査が示す業界全体の実態で、自社だけの遅れではありません。そして、やめられない最大の理由は取引先の都合(調査では63.0%)であり、受注側の努力だけで受信をなくすのは当面むずかしいのが現実です。
だからこそ、変えるべき対象は「FAXの受信」ではなく「届いた後の手入力」です。まず現状を枚数と時間で測り、品目マスタと読み方メモを整え、そのうえで手入力を「確認」に置き換える——この順番なら、取引先に一切お願いすることなく、受注側の判断だけで一歩を踏み出せます。
手前味噌の紹介
この記事を書いているのは、注文書特化サービス注文書係(ちゅうもんしょがかり)の運営者です。FAX・手書きの注文書をアップロードするとAIが下書きを作り、自信のない項目だけを黄色で示すので、担当者は怪しい箇所を10秒ほど確認すればCSVを出力できます。型番のように読み違いが怖い項目こそ、品目マスタと突き合わせて「ここは確認してください」と示す仕組みが役に立ちます。
無料トライアルは30枚または14日間で、クレジットカードの登録は不要です。まずは一番読みにくい取引先の注文書を数枚読ませて、型番の読み取りと確認のしやすさから確かめてみてください。月額9,800円(税抜)から、初期費用は0円です。